常盤薬品工業株式会社

業種 メーカー
2024年取材記事
「患者さまの健康のため」という医薬品製造の“原点”を胸に 工場全体を統括する重責を担う。
三重工場
博士課程薬学専攻 2016 年修了
私のCAREER
医薬品製造管理者

医薬品製造管理者として、工場が達成すべき品質目標を策定し、製造管理や品質管理が適正かつ円滑に実行されるよう全体を統括する重責を担っています。年間数千万本生産される製品の中から、1本たりとも不適格な製品を出荷することのないよう細心の注意を払い、「患者さま第一」の精神を工場全体で体現しています。

9年のCAREER

  • 1年目

    大学で研究に勤しむ

    大学院で遺伝子発現の仕組みを学んだことから、生命科学の基礎研究に魅了され、大学院修了後は大学で研究職に就く

  • 3年目

    常盤薬品工業に入社
    品質管理グループに配属

    品質管理に関する研修を受けた後、三重工場で医薬品原料の品質をチェックするための理化学試験業務を主に担当。日本薬局方に基づく試験操作法や、高速液体クロマトグラフ(HPLC)をはじめとする分析機器の取り扱い方を習得

  • 3.5年目

    卸売販売業の
    管理薬剤師を兼任

    入社から7カ月後、勤務地に所在する物流倉庫の管理業務も兼務。出納や温度環境の日常確認、定期的な自己点検や教育訓練、トラブル対応なども担当

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    ここがPOINT1

    それまで全く接点のなかった物流部門の方との業務はハードルの高いミッションでした。現場の皆さんには当初、“新人”の私は頼りなく映ったようですが、足繁く通い、要望があればその実現のために力を尽くすという地道な行動を続けた結果、良好な関係を築けました。

  • 6年目

    省令改正に合わせて新設された
    品質保証チームに配属

    品質管理グループ内に新設された品質保証チームに配属。原材料供給から製造所出荷まで、医薬品の製品品質に関連した三重工場のあらゆる事象に目を光らせる役割を担う。書類確認のみならず、作業現場へ赴いて実態把握に努める

  • 7年目

    三重工場の
    医薬品製造管理者に就任

    三重工場の製造管理及び品質管理を統括する医薬品製造管理者に就任。工場が達成すべき品質目標を策定し、目標達成のための活動の進捗確認を行うとともに、行政や製造受託の窓口としても対応

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    ここがPOINT2

    医薬品製造は多分野の専門家によって支えられています。私一人でできることには限界があるため、「その道のプロ」から意見を聞くことを重視しています。丸腰で臨むのではなく、「私はこう思っていますが、実際のところをプロの視点から教えてください」などと自分なりの仮説を携えて伺うことで、自身の成長にもつながっていると感じています。

大学の研究職から“原点回帰”
医薬品製造を管理する薬剤師へ

 白衣を着て試験管を振る科学者に漠然とした憧れがあり、幼少の頃から薬剤師を夢見ていました。大学院修了後は大学で研究職に就いていたのですが、30歳という節目を迎えて自身のキャリアを顧みた時、元来、薬剤師を志し大学で学んできたのであり、その免許を生かす道もあると“原点回帰”の想いが芽生えました。
 そして、研究職として培った分析化学の知見も生かせるキャリアとして、製薬会社の医薬品製造管理者や総括製造販売責任者という道筋を描いた時に目に留まったのが当社の求人でした。医薬品だけでなく食品や化粧品など多様な活躍フィールドがあるところに惹かれ、さらには愛飲していた「眠眠打破」のメーカーであることにも親近感を覚え、入社を決めました。
 入社時研修を経て、まず三重工場で品質管理業務に従事し、仕入れた医薬品原料自体の品質を前もってチェックする理化学試験を担当。前職の経験から技術面に不安は無かったものの、その背景にあるGMP(Good Manufacturing Practice:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)省令などの法的根拠の習熟にはかなりの時間を要しました。
 三重工場の敷地は東京ドーム2.7個分にも及び、多くの製造施設があるにもかかわらず、私の活動範囲は分析装置のある実験室に限られていました。まさに「井の中の蛙」状態でしたが、製造現場から製造中の検体を持ち帰って試験を行うサンプリングや、入出荷時に倉庫で行う品質確認など、少しずつ実験室の外にも業務の領域を広げていきました。

経験不足を
現場での対話で“打破”

 入社から7カ月後、試験業務に加えて、勤務地に所在する物流倉庫の管理業務も兼務。管理薬剤師として商品を保管する倉庫の出納や温度環境の日常確認、定期的な自己点検なども担当しました。また、従業員の皆さんに向けて、品質管理のスキル向上や、関連法規の周知などの教育訓練も実施するなど業務の幅は大きく広がりました。
 ただ、入社1年目の私にとって、それまで全く接点のなかった物流部門の皆さんと業務を行うことはハードルの高いミッションでした。トラブル対応も管理薬剤師の重要な役割であり、例えば倉庫内の温度や衛生環境に変化があると、品質が損なわれる恐れがあるため対策が必要になりますが、現場の皆さんに“新人”の私は頼りなく映ったようで、調整は難航しました。コミュニケーションの大切さを痛感し、物流拠点に足繁く通い、世間話をしながら困り事を尋ねて歩き、ちょっとしたことでも迅速に改善策を打つことを地道に積み重ねていくうちに「○○に言えば何とかしてくれる」という信頼関係を築いていくことができたのではないかと思っています。

16年ぶりの省令改正に対応
製造現場を目視して実態把握

 入社4年目の2021年4月には、GMP省令の改正に合わせて新設された「品質保証チーム」に配属となり、16年ぶりの大幅な省令改正に対応するための仕組みやマニュアルの整備に携わりました。従来、品質管理と製造管理はそれぞれ独立した組織が担っていましたが、改正後は品質保証チームが第三者的に工場全体の品質管理と製造管理の双方に目を光らせることになったのです。
 品質管理は入社以来、経験を積んできましたが、製造管理は未知の世界であり、書類だけでなく、製造現場に赴き、自分の目で見て、ヒアリングして、適正な業務が行われているか実態を把握することに努めました。

達成すべき品質目標を策定し
工場全体の方向性を提示

 入社5年目には医薬品製造管理者に就任。三重工場全体の製造管理・品質管理を統括する重責です。工場が達成すべき品質目標を策定し、工場全体の方向性を示す役割も担うため、それまで経験してきた業務よりもはるかに高い視座が求められます。医薬品製造は多分野の専門家によって支えられており、その多彩な専門家を統括する役割を任されているのが薬剤師である医薬品製造管理者なのです。
 工場内で発生したトラブルの改善措置や製品のクレームに関する原因調査、さらには行政やOEM(製造受託)の窓口対応も主要な業務であり、また安定供給を継続することも使命です。こうした広範な工場業務の状況や目標の進捗をGMP関連の月例会議で確認し、四半期ごとに取りまとめて資源配分の要望とともに経営陣へ報告しています。
 三重工場の生産量は年間数千万本に及び、不適格な製品が1本たりとも工場の外に流出しないよう細心の注意を払い、製造記録や試験検査記録などの文書から、法令遵守はもちろん製品品質に懸念が無いことを確認しています。三重工場の主力は「ドリンク剤」と呼ばれる一般用医薬品であり、「風味」も重要な要素です。異なる種類の製品を連続して製造する際、先に製造した製品の香りが次の製品の品質に影響を及ぼさないように適切に管理しています。少しでも懸念があれば現場へ行き、自分の舌などの五感で状態を確認しています。
 工場には会社の歩みを記録した「学びの回廊」があり、失敗もオープンにしてより良い製品づくりに生かしています。その根底にあるのは「患者さま第一」の精神です。わずかなミスが取り返しのつかない事態を招くことを肝に銘じ、「私たちは何のために医薬品を作っているのか」、すなわち「患者さまの健康のためである」というマインドの醸成にあらためて注力していきたいと考えています。

TO MY FUTURE

Myタイムカプセル

5・10年後の私

日本の医薬品製造へ向けられる視線は日々厳しくなっており、昨今の違反事例を他山の石として自社の体制を見直していくことが必要だと考えています。国際水準に合わせ、日本の関係法令も見直されています。そうした時代の変化に対応できる力を身に付け、高品質の医薬品を安定して患者さまにお届けできるよう、より盤石なGMP運用体制を築いていくことが、三重工場の医薬品製造管理者である私の使命です。

私なりの仕事の心掛け

「昨日よりも成長した」と実感できる習慣を大切に

毎日学び続けることです。情報収集のレベルで構いません。医薬品関連のニュースや報告書、法律の解釈、あるいはちょっとした疑問などをそのままにせず、ネットで調べて解決する。そうした学びを継続し、昨日までの自分とは違うと実感できる習慣を大切にしています。

これが成功の分岐点

小さなチャンスでも貪欲に挑戦し、存在感を示す

30歳で中途入社した私は、入社後の面談で「小さなことでもチャンスがあればください」と申し出ました。すると、安全衛生に関する定例会議に出席する機会を得て、新人が参加するのは異例でしたが、臆することなく積極的に発言しました。その後、部署の垣根を越えたさまざまなプロジェクトに招集される機会が増えたように思います。与えられたチャンスを生かして存在感を示せば、さらに次のチャンスを得られる好循環につながることを実感しました。

学生の皆さんへメッセージ

自ら可能性の芽を摘むことなく 広く情報収集を

私は大学院で研究がしたいとの思いが強く、就職活動はほとんどしませんでした。しかし、先輩に会ったり、職場体験やインターンシップに参加したりして、視野を広げた上で進路を判断してもよかったのではないかと考えています。「興味が湧かない」「自分には向いていない」と可能性の芽を摘んでしまうのはもったいないことです。学生の皆さんには、この業界を広く深く見渡して情報収集してほしいと思います。思い掛けない発見があるかもしれません。

オフタイム

休日は仕事を忘れ、特に子どもが生まれてからは
家族と過ごす時間を大切にしています。
最近は家族と散歩中に見かけた野花や雑草をアプリで調べては、
その名称や特徴を学ぶことにハマっています。
また、ささやかながらプランター菜園を始めました。
子どもに何か体験させたいというのがきっかけでしたが、
自然の生命力にいつも元気をもらっています。

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