仕事内容もキャリア設計も
男女問わず活躍できる環境
就職活動を始めた当初は、企業で臨床研究などの仕事に就くことを考えていました。「男女差のない職場環境なので、長く勤めるのなら良いのでは」と、公務員の道もあると教えてくれたのは研究室の恩師です。恩師が女性だからこその助言ですが、行政機関は薬だけでなく食品や環境など学校で学んだ知識を活かせるステージが多いことも、恩師が公務員を勧めてくださった理由だと思います。
入庁後、女性職員の増加とともに、産休や育休、時短勤務を利用して復帰後もかわらず活躍している職員が増え、働きやすい環境とやりがいのある職場であることを実感しています。また薬務課はほとんどが薬剤師で、意思の疎通も図りやすいですね。
医薬品事業者や府民を
専門知識でサポート
薬務課で、私が最初に配属されたのは麻薬毒劇物グループです。化学品メーカーなどの取り扱う薬品が毒物劇物に該当するかの判断や、登録のための審査、施設での立入調査などを担当しました。大学で勉強した有機化学の知識が役立ちましたが、一方でベースとなる毒物及び劇物取締法についての知識不足を痛感。その勉強に役立ったのが、先輩に手渡された法律の本。「まずは逐条解説を読んで、どこに何が書いてあるか把握しておくといい」など、具体的なアバイスもいただけありがたかったですね。
その後、四條畷保健所で薬事関連業務全般に関わったのち、医薬品生産グループや医療機器グループを経験。新しい医薬品や医療機器の製造などが適正なものか審査し、必要に応じて指導を行いました。判断が難しいケースは、過去の事例を調べ、国にも照会をかけます。どのケースにおいても、重視したのは「自分が患者だったら」の視点。この薬を自分は飲みたいか、不安なら何が不安かといったことを常に意識することで、問題点が具体的に見えてくるからです。新しい薬や機器を待ち望んでいる人も大勢いますので、より安全かつ良いものを届けられるよう的確な判断と指導を心掛けました。
11年目からは独立行政法人医薬基盤研究所(現・国立研究開発法人医薬基盤・健康栄養研究所)に出向し、創薬研究の事務補助にあたりました。国から資金援助を受ける場合や企業とタイアップで研究する場合、研究者が作成した審査書類を薬剤師の目線で添削することもありました。研究者の強みや研究内容をきちんと理解した上で、いかに有益性のある研究かが伝わる文書にするか。自分が持っている知識や工夫を活かせる業務はとてもやりがいがありました。
現在は本庁に戻り、将来の医療ニーズを見据えた計画の作成、薬の副作用や医療に関する府民への問い合わせ対応、課内各グループをまたぐ薬事審議会のセッティングなど、これまでの経験を活かし、多様な業務に取り組んでいます。総括主査として、今後は後輩の育成にも力を入れたいと考えています。
世の中で起きている問題に
敏感になることが大切
行政の仕事は、薬学や法律の専門知識に加え、人との折衝能力が求められます。対象となるのは企業や団体、一般府民など様々。その際、特に意識しているのは、相手の気持ちをできるだけ丁寧に汲み取ること。その上でベストな方向を探るようにしています。
公務員を希望する皆さんには、世の中で起きている問題に敏感でいてほしいですね。人の〝困った〟を解決するのが行政の仕事。日頃から問題意識を持ってニュースなどを見て視野を広げ、考えを深めておくといいでしょう。そこに薬学の知識をどう反映するかは自分次第。様々な場面で働きがいを感じられる環境だと思います。