さまざまなタイプの病院で
幅広いスキルと経験を積む
臨床現場で研究がしたいとの思いから国立病院への就職を決めました。近畿で中心的な存在の急性期病院である国立大阪病院(現・大阪医療センター)では、調剤や製剤などの基本を1~2年かけてしっかりと学びました。3年目からは病棟にも上がるようになり、服薬指導だけでなく、医師と相談しながら薬物療法にも介入。特に有害事象が起きた場合には、対症療法を積極的に提案するようにしていました。
臨床現場では自分ひとりで研究ができるわけではなく、医師との議論に多くの時間を費やし、多職種と連携していくことが求められます。さまざまな角度から事象を検討する中で、治療に介入していくプロセスを学ぶことができました。
また、5年目には療養を目的とした小規模病院に異動。3名という限られた薬剤師で、薬に関するあらゆる業務を遂行する中で、薬局全体を見る目を養うことができました。このようにさまざまなタイプの病院を経験でき、幅広いスキルや経験を積み重ねられるのが、国立病院機構のよいところだと思います。
薬務やICT(感染対策チーム)を通じて
多角的な視点を磨く
15年目には薬務主任となり、医薬品管理や医薬品に関わる情報収集などを実施。病院経営という観点で見ると、医薬品にかかるコストは非常に大きなもので、薬務を通じて品質はもちろん、経営的な視点から医薬品を評価することも覚えました。
同時期にICTにも参加。病棟では薬から病態を見るケースが多いのですが、ICTでは病態からどの薬をどう使うかの判断を求められ、医師の思考プロセスを実体験することもできました。また、病院横断的に現場に介入するだけに視野も広がり、患者さんだけでなく、さまざまな業務を行う上での職場環境を考える契機にもなりました。
適切なマネジメントと
後進の育成に特に注力
23年目には副薬剤部長として、後進の薬剤師たちが臨床研究を行うための基盤づくりにも取り組みました。なかでも有害事象のケースに着目し、どういう場合に起き得るのかを詳細に解析し、臨床研究のシードを見つけられる仕組みをつくりあげていきました。
現在は薬剤部長として、薬剤部として進むべき方向性を示し、それに則って部下を指導しています。特に時代とともに薬剤師に求められる役割が変化していく中にあって、高度専門病院でより専門特化した業務を行う薬剤師、在宅で療養環境から薬物療法までトータルにマネジメントできる薬剤師といったように、いずれの方向に進むかを自身で判断し、プロフェッショナルとして自己研鑽していける薬剤師を多く輩出していきたいと考えています。
また、地域の中核病院として地域の薬局などと連携し、医療環境を広範に整えていくことも大切です。従来の病院を超えた枠組みの中でどう行動すべきか、自身で考え判断できる薬剤師を一人でも多く育て、地域医療に貢献できるようにしていきたいと思います。