独立行政法人国立病院機構 近畿グループ

業種 病院

資格取得

日本病院薬剤師会認定HIV感染症専門薬剤師
2016年取材記事
継続して飲み続けられるように、
ライフスタイルや飲み味にも配慮して提案。
国立病院機構大阪医療センター薬剤部 調剤主任
薬学研究科博士課程修了 2006年入社

ライフスタイルに則した投薬を
患者さんと一緒に考える

 調剤併設のドラッグストアでの勤務を経て、2003年に厚生労働省実務研修薬剤師制度に応募し、国立大阪病院(現大阪医療センター)で研修を受けることに。HIV感染症の近畿における拠点施設に指定されている同病院で、初めてHIV感染症について本格的に学ぶ機会を得ました。研修後は、病院薬剤師として感染症に携わるなど広く経験を積み、2006年に大阪医療センターに入職。病棟および外来のHIV感染症患者さんを担当するようになったのです。
 当院におけるHIV診療の場合、医師が抗HIV薬の服用開始を決め、数種類の候補となる薬を提示した後、薬剤師がそれぞれの薬の詳細を説明し、患者さんに薬を選択してもらうという流れです。薬剤師として直接、処方に関わることになるので、責任もやりがいも大きいと言えます。
 特に抗HIV薬は一生涯にわたり継続して服用する必要があり、中途半端な服薬は早期に薬剤耐性を誘導することになりかねず、薬の選択は患者さんの将来、予後を決める大変重要なものです。決まった時間に継続して服用できるよう、ライフスタイルを細やかに確認しながら、どの薬が良いかを一緒に考えていきます。また、最新データなどを提示しながら、メリットもデメリットもできる限り明確に伝えるとともに、効用だけでなく〝飲み味〟なども丁寧に説明し、提案をするようにしています。

あまり特化し過ぎずに
幅広い知識を養ってほしい

 HIV感染症の日本での感染者数が徐々に増加していることや、薬物療法を厳密に行う必要性があることから、薬剤師がより専門性を持って関われる体制をつくろうと、2008年頃からHIV感染症専門薬剤師制度を立ち上げる動きが活発化し、私もその準備に助力しました。そして翌年、制度発足と同時に、一期生として資格を取得しました。
 HIV感染領域の学会発表が2回以上などの申請条件がありますが、私の場合は2003年から毎年学会発表を行い、症例報告のためのデータ整理も日常的に行っていたため、試験のための〝特別な準備〟はありませんでした。むしろHIV患者さんは他の生活習慣病をはじめとする疾患を高率で併発するため、あまり特化し過ぎず、幅広い知識を養うことが重要だと思います。
 資格取得によって私自身が変わることはありませんが、周囲の理解や協力を得やすくなるなど、取り巻く状況は徐々に良い方向に変わってきました。HIV患者さんのための「お薬の相談室」も、HIV診療を行う感染症内科外来の横に設置され、社会からの認知度も高まっていると感じています。
 今後は、遺伝子を解析し、副作用の発現可能性を事前に予測するなど、遺伝子検査を活用したテーラーメイド医療に薬剤師の立場から貢献していきたいと考えています。また大学の研究室と連携を深めて、薬物療法のさらなる発展の促進につなげていきたいですね。

ADVICE

後輩の皆さんへアドバイス

幅広い知識と
経験を積もう!

大学で学んだ知識は社会に出てからも十分生きてくるので、しっかりと勉強してきてほしいと思います。特にHIV感染症は合併症を併発することも多いので、始めから特化し過ぎずに、幅広く経験を積むことも大切です。

HIV感染症薬物療法認定薬剤師であることなどが必要
  • 実務経験

    薬剤師歴5年以上、
    HIV患者に対する指導に
    3年以上従事
  • 認定薬剤師取得

    研修の受講や講習会などの
    単位(10時間、5単位)以上
    履修した後、
    認定薬剤師試験を受験する
  • 申請・試験

    HIV感染症領域に関する
    学会発表2回以上、
    学術論文1編以上が必要
  • 更新

    5年ごとに更新が必要 
取得方法

HIV感染症専門薬剤師の認定を申請する者は、以下の資格をすべて具備する必要があります。(1)HIV感染症薬物療法認定薬剤師であり、かつ日本エイズ学会の会員であること。(2)日本医療薬学会、日本薬学会、日本薬剤師会学術大会、日本エイズ学会、関連する国際学会、全国レベルの学会あるいは日本病院薬剤師会ブロック学術大会において、HIV感染症領域に関する学会発表が2回以上(うち少なくとも1回は発表者)、複数査読制のある国際的あるいは全国的学会誌・学術雑誌にHIV感染症領域に関する学術論文が1編以上(筆頭著者)のすべてを満たしていること。(3)病院長あるいは施設長などの推薦があることなどの条件があります。

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