京都第二赤十字病院

業種 病院
2018年取材記事
臨床薬剤師としてのスキルを高め
医療の質的向上や医療安全に貢献。
薬剤部 薬剤管理指導課 病棟薬剤業務係長
薬学研究科(前期課程)修了 2010 年入社
私のCAREER
病棟薬剤業務係長

ICU病棟の重症度の高い患者さんに対して、治療の根幹となる薬剤の処方提案をしたり、抗菌薬の適正使用を推進したり、 さらに病棟薬剤師を統括する立場として病棟間の情報共有を図り、迅速な課題解決に努めたりと、 「薬剤師として今、自分ができること」に全力で取り組んでいます。

9年のCAREER

  • 1年目

    入職
    調剤・病棟業務に携わる

    1年目はまず調剤業務の基本を徹底的に学ぶ。1年目の後半からは、病棟研修も始まり、多様な診療科の病棟をローテーションした後、2年目からはICU病棟を主に担当するようになる

  • 3年目

    ICU病棟専任薬剤師

    3年目からはICU病棟の専任薬剤師となり、多様な疾患の患者さんに対し、感染や栄養面からのサポートに加え、配合変化を考慮したルート管理などを通じて、医療の質向上と医療安全に貢献する

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    ここがPOINT1

    ICU病棟の患者さんは重症度が高く、患者さんの状態に応じた安全かつ有効な薬物療法が求められます。他職種と協働する中で、治療の根幹に関わる薬剤について医師に処方提案し、患者さんの改善につながった時、チーム医療の一員として薬剤師の重要性を実感します。

  • 4年目

    感染制御部の業務に従事
    臨床論文研究会を立ち上げる

    ICU病棟を担当しながら、感染制御部にも一部出向し、感染予防に向けた環境整備や、抗菌薬の適正使用を推進。耐性菌を増やさないよう、広域抗菌薬の適正使用には特に注力し、成果を上げる。また臨床論文研究会を立ち上げ、定期的に研究発表を行う場も整備

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    ここがPOINT2

    新たな耐性菌の出現と蔓延を防止することを目的に、薬剤師を中心にした抗菌薬適正使用チームを結成。抗菌薬による治療効果の最大化と有害事象の最小化につながるよう、最適な感染症治療を主治医に提案することで、大きな成果を上げています。

  • 6年目

    感染制御専門薬剤師
    抗菌化学療法認定薬剤師の資格取得

    感染制御部での業務拡充を目指す中で、抗菌化学療法認定薬剤師と感染制御認定薬剤師を最短で取得。同時に臨床論文研究会での発表・討論の場を活用しながら抗菌薬適正使用や感染対策ソフトに関する論文を執筆し、同年に感染制御専門薬剤師の資格も取得

  • 7年目

    薬剤部 係長に就任

    病棟業務や薬剤部業務の効率化、質的向上を目指し、これまでICU病棟や感染制御部で培ってきたノウハウをもとに、次世代の育成を推進。また2012年に開設された「おくすりサポートセンター」で、術前中止薬のスクリーニングを事前に行うなどの取り組みも実施

ICU病棟の専任薬剤師として
患者さんの症状改善に貢献

 大学院で感染成立のメカニズムなどについて研究を行う中で臨床研究にも興味を持つようになりました。当院の薬剤部長(当時)の「研究ノウハウを持つ臨床薬剤師を育てたい」という意向と合致したこともあり、当院への入職を決めました。
 1年目は調剤の基本を徹底して学び、さらに後半からは病棟での研修も始まり、様々な診療科の病棟を一通り経験しました。2年目からはICU病棟を中心に担当し、3年目からは同病棟の専任薬剤師になりました。
 ICU病棟では、これまで薬剤師が常駐することがなかっただけに、最初は私も受け入れ側の病棟スタッフもどう対応すればいいのか戸惑いもありました。積極的にコミュニケーションをとって情報を収集し、カンファレンスにも自ら進んで参加。「薬剤師としてできることは何か」と糸口を探し、例えば配合変化が一目でわかる表を作成したり、使用実績に応じて常備薬の見直しをしたりすることで、徐々に信頼関係を構築していきました。ICUの患者さんは重症度が高く、まさに生死を分けると言っても過言ではない治療の根幹に関わる薬剤について医師に処方提案し、それが採用されて患者さんの命が助かったり、症状が改善されたりすると、大きなやりがいを感じます。

抗菌薬の適正使用に向けた
活動を展開

 4年目からは大学院時代に感染に関わる研究をしていた経験を買われて、感染制御にも携わるようになりました。まずは新たな耐性菌の出現や蔓延を防止することを目的として、その要因の一端となる特定広域抗菌薬の使用状況に着目。他の抗菌薬に変更可能なものは、医師に代替処方を提案するなど、抗菌薬の適正使用に取り組みました。最初は難色を示されることもありましたが、勉強を重ねてエビデンスを提示し、根気よく説明を続け、また感染制御の仕組みをパターン化した「感染対策ソフトウエア」を導入するなど工夫も重ね、特定広域抗菌薬の使用量を必要最低限に抑えることができました。
 こうした活動成果を活かし、ICU病棟では感染症の発症リスクの高い患者さんを術前に予めスクリーニングし、定期的にモニタリングすることで発症を抑制する仕組みを構築するなど、取り組みを深化。現在では医師から相談されるケースも増えています。
 また、6年目には抗菌化学療法認定薬剤師と感染制御認定薬剤師の資格を取得。感染制御認定薬剤師の試験範囲は、抗菌薬のほかに滅菌や消毒、HIVと多岐にわたっているため、改めて他領域を勉強するきっかけとなり、知識の厚みを増すことができました。さらに同時に論文も執筆し、同年に感染制御専門薬剤師の資格も取得しました。
 論文執筆にあたっては、私自身が発起人となって有志で集まって臨床論文研究会を立ち上げ、週1回、定期的に研究発表を行い、ディスカッションを行う場も整備。おかげで、目標を持って取り組むことができ、また多角的に考察したり、プレゼンしたりする力も付いたと感じています。

リーダー会の開催など
病棟間の情報共有に注力

 7年目には係長の職に就き、病棟薬剤師を統括する立場となり、病棟で起きている様々な課題解決に当たっています。当院はICUを含む14病棟から構成されており、32名の病棟専任薬剤師が日々、業務を行っています。数多くの病棟薬剤師の業務状況を把握するために、14病棟を7つにグループ分けし、それぞれにリーダーを設置。月1回、リーダー会を開催し、私が事前にヒヤリングした内容をもとに、病棟の垣根を越えて意見交換することで、効率的な課題解決や、事例の共有が進み、病棟業務の品質向上にもつながっています。症例検討会も定期的に開催し、薬剤師が集まる中で発表することで、情報共有のみならず、プレゼン力の向上も図っています。
 また2012年に開設された「おくすりサポートセンター」で持参薬の鑑別はもちろん、術前中止薬のスクリーニングなどの取り組みも行っています。今後さらにICUの前段階である、ER(救急室)や手術の段階でも薬剤師として介入していけるよう、取り組みを深化させていきたいと考えています。

資格という「鎧」を身に付け
薬剤師の職能拡大に尽力

 現在すでに日本医療薬学会の指導薬剤師の認定申請に必要となる条件の一つ、「学術論文10報以上を有すること」を満たしていることもあり、近いうちに申請・取得したいと考えています。これまでにも感染制御や抗菌薬の分野での資格を取得してきましたが、資格はいわば「鎧」のようなものです。「鎧」を身に付けただけでは何の意味もなく、それを活かしてどう医療の質向上につながる新たな職能を切り拓いていくかが重要なのだと考えています。
 また、抗菌薬の適正使用について、学会発表などを通じて広く情報発信していくことはもちろん、地域の診療所などを含めた多様な施設で働く医療スタッフなどにも向けて、研究会や勉強会なども開催し、啓発やさらなる問題解決に努めていきたいと考えています。

TO MY FUTURE

Myタイムカプセル

5・10年後の私

●抗菌薬の適正使用について、院内はもちろん、地域の診療所などに向けて広く情報発信し、地域医療の質向上や医療安全に貢献したいと思います。
●大学院で博士前期課程を修了しましたが、諸事情により学位を取得することができなかったため、今後4年を目途に再度取得に向けチャレンジしたいと考えています。

これが成功の分岐点

臨床論文研究会を結成し
有志で毎週開催

病棟薬剤師になって3年が経つ頃、入職当初の一つの目標でもあった臨床研究に取りかかりましたが、日々の業務に忙殺され、なかなか前に進みませんでした。そこで同じ思いを持つ仲間と一緒になって臨床論文研究会を結成。週1回、各々の研究の進行状況を報告し、方針を定めたり、問題点を解決したりすることで、目標設定も明確になり、また考察力やプレゼン力も高まりました。

私なりの仕事の心掛け

新たな仕組みをつくる
変革していく姿勢を前面に

受け身にならず、積極的に何かを変えていく、つくっていくことを心掛けています。私が専任薬剤師として担当するICU病棟にはこれまで薬剤師がいなかったため、医師や看護師を中心とした“医療の仕組み”はすでに構築されており、そこに薬剤師という新たなパーツを組み込むことは、受け身ではできないことでした。積極的にコミュニケーションを取り、ニーズを把握して、薬剤師だからできることを提供し、新たに“医療の仕組み”をつくりあげることで、医療の質向上に貢献できました。

学生の皆さんへメッセージ

「大変だ」と思うことを自ら進んで
多く経験しておいてほしい

「大変だ」「しんどい」と思うことを自ら進んでする姿勢が大切だと思います。学生時代にしんどい経験を多く積んでおけば、どのような職場でも大変なことを積極的に行える薬剤師になることができます。それはつまり、「患者さんのためになることをより多くできる薬剤師」になれるということです。

オフタイム

休日は子どもの習い事に付き添い、帰りに食事をしたり、買物をしたり、公園で遊んだりして過ごしています。
夏休みは家族で海水浴やサファリパークに出かけたり…。今年はリニアモーターカーの試乗会に抽選で当たり、皆で行くのを楽しみにしています!

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