様々なキャリア~目標とする働き方~
京都第二赤十字病院
インデックス
救急領域の薬剤師業務の確立と地域の災害対応力向上に力を尽くしたい。
多領域にまたがる薬の知識で より安全な治療に貢献
実習先の病院で、薬剤師がチーム医療の一員として活躍する様子を見て、「私も多職種と連携し患者さんに貢献したい」と病院薬剤師を志望。大規模な総合病院でジェネラリストとして幅広い基礎を身に付けたいと、京都第二赤十字病院への入職を決めました。 1年目は、調剤業務を徹底して学ぶことから始め、10月からは脳神経外科と眼科からなる一般病棟にも上がるようになりました。まだ病棟に薬剤師がいることが今ほど当たり前ではない時代にあって、チームの一員として病棟で不可欠な存在になりたいと、医師への処方提案にとどまらず、その後の経過も責任を持って見守るなど、病棟薬剤師の在り方を模索していました。 高度急性期病院である当院に来られる患者さんの中には、複数の疾患を持つ方もいて、既往歴まで含めると治療薬の種類は膨大です。相互作用の確認はもちろん、もともとの病気を悪化させることなく安全に治療を行うにはどうすべきかという観点は非常に重要になります。担当医師の専門領域外の薬など、多領域にまたがる豊富な知識を持つことで、薬剤師の存在価値は高まり、安全性の担保にも非常に大きな役割を果たすことができると実感。膨大な薬の知識習得により励むとともに、看護師との情報共有など連携の強化をより意識するようになりました。 栄養面からの評価もできるようになりたいとNST(栄養サポートチーム)にも参加し、また既往歴に多い糖尿病に関する知識も深めたいと勉強して、糖尿病療養指導士の資格を取得しました。
臨床薬剤師としてのスキルを高め 医療の質的向上や医療安全に貢献。
ICU病棟の専任薬剤師として 患者さんの症状改善に貢献
大学院で感染成立のメカニズムなどについて研究を行う中で臨床研究にも興味を持つようになりました。当院の薬剤部長(当時)の「研究ノウハウを持つ臨床薬剤師を育てたい」という意向と合致したこともあり、当院への入職を決めました。 1年目は調剤の基本を徹底して学び、さらに後半からは病棟での研修も始まり、様々な診療科の病棟を一通り経験しました。2年目からはICU病棟を中心に担当し、3年目からは同病棟の専任薬剤師になりました。 ICU病棟では、これまで薬剤師が常駐することがなかっただけに、最初は私も受け入れ側の病棟スタッフもどう対応すればいいのか戸惑いもありました。積極的にコミュニケーションをとって情報を収集し、カンファレンスにも自ら進んで参加。「薬剤師としてできることは何か」と糸口を探し、例えば配合変化が一目でわかる表を作成したり、使用実績に応じて常備薬の見直しをしたりすることで、徐々に信頼関係を構築していきました。ICUの患者さんは重症度が高く、まさに生死を分けると言っても過言ではない治療の根幹に関わる薬剤について医師に処方提案し、それが採用されて患者さんの命が助かったり、症状が改善されたりすると、大きなやりがいを感じます。
医薬品マスター管理や情報発信を通じて 安全で適正な薬物療法に貢献したい。
資格取得は
新たな知識を得る入口
私にとって資格取得は、経験で培った知識を再整理し、理解を深めていくものであると同時に、新たな知識を得るという“楽しみ”をもたらしてくれるものでもあります。これまでにも、糖尿病療養指導士や小児薬物療法認定薬剤師の資格を取得し、よりエビデンスに基づいた処方提案などに活かしてきました。 さらに入職8年目の頃、直接業務とは関係なかったのですが、もともとパソコンに興味を持っていたことに加え、自分の世界を広げたいという気持ちから、IT国家資格である基本情報技術者の資格取得にチャレンジ。その半年後には情報セキュリティマネジメントの資格も取得しました。 このことを上司に報告すると、「そのスキルを医療情報の場で活かしてみないか」と言われ、医薬品マスター管理に携わることになりました。ところが実際に業務をしてみると、医療情報システムに関する知識不足を痛感。医学・医療、医療情報システム、情報処理技術の3つの分野を網羅する医療情報技師の資格取得を目標に勉強を開始しました。ちょうど出産や育児の時期とも重なり、「育児と仕事と資格取得のための勉強と、3つを同時に行うのは大変だったでしょう」とよく言われましたが、私にとっては仕事か育児かの二択ではなく、勉強という自分の時間を設けることで、気分転換にもなっていました。また、ちょっとした隙間時間を有効活用できるように、あらかじめテキストをPDF化してタブレットで見られるようにしておくなど工夫もしていました。受験をモチベーションに勉強を進める中で、医事課や調度課なども含む医療情報システムの全体像についての理解も深まり、3カ月ほどで資格も取得することができました。
薬学的な視点から栄養摂取を阻害する要因にアプローチし、症状改善につなげたい。
薬学的な視点から 栄養状態の改善に貢献
栄養の重要性は認識していたものの、最初の1~2年は業務を覚えることに必死で深く勉強する機会がありませんでした。3年目を迎える頃にNST(栄養サポートチーム)の薬剤師にNST専門療法士研修に誘われ、「栄養について勉強するよい機会だ」と思い、参加を決めました。 当院はNST専門療法士の認定研修施設になっているため、まずは当院で2週間にわたって他施設の看護師や栄養士とともに研修を受講。他職種と一緒に学ぶ中で、互いの職能に対する理解を深めることができ、また栄養管理に関わる共通認識も育まれ、NSTに参加するよい準備となりました。 研修修了後は、実際にNSTの活動に参加。各病棟を回診し、対象となる患者さんの栄養サポートを行います。抱える課題は患者さん一人ひとりで違うため、個人に合わせた介入が重要になります。家族の協力も必要不可欠となるため、家族状況や生活スタイルなど、丁寧に患者さんのバックグラウンドをヒヤリングし、最適な栄養サポートの方法を考えていきます。例えば、栄養状態改善のために最適な輸液療法を検討したり、下痢や嘔吐などの消化器系合併症が薬剤によって引き起こされていないか考えてみたり…。薬剤師として、特に薬学的な視点から医師や看護師などに啓発できるよう努めています。 やせ細っていた患者さんの栄養状態が改善し、疾病の治癒につながり、笑顔で退院される様子を見ると、大きなやりがいを感じます。また、看護師や栄養士と協働することで、様々な視点から患者さんの栄養状態の改善を考えられるようになり、引き出しが増えたと感じています。