安全な医薬品、
医療機器を届けるために
世の中に流通する医薬品や医療機器、その安全性を担保するのが薬事監視員の仕事です。製造から使用に至るまでの品質、有効性、安全性が確保されるよう、製薬会社の施設等に立入調査を行い、許可届出の内容と合致しているか製造工程や手順を確認。必要があれば改善指導を行います。
また、既に流通している医薬品・機器について、何らかの理由でメーカーが自主回収する際の監視指導を行っています。例えば、測定値に誤差が発生するという場合。小さな誤差が健康を害する可能性もあるわけですから、原因究明を徹底し、再発防止の対処策はそれで十分か判断し、必要があれば指導を行います。こちらの指導内容によっては、企業に経済的、人的負担がかかり経営に影響する場合もあるため自分の発言に責任の重さを感じますが、不備のある製品の流通を未然に防ぐ体制を整えることにつながると捉えています。
病院薬剤師から公務員へ転職したのは約15年前。「もっと広く多くの方の健康に関わりたい」という思いがあったからです。今、私が調査や監視を行っているのは数カ所の事業所かもしれません。しかし、その先には薬や機器を使われる多くの患者様、お客様がおられます。業務の一つひとつが、たくさんの人の健康や安心に関わっていると大きなやりがいを感じています。
「こうしてください」ではなく
事業者と一緒に考え検討する
入庁後は環境、衛生、現在の薬事と、様々な職務に携わってきました。対象となる事業分野、職種は異なりますが、府職員として心がけてきたのは、「こうしてください」と一方的に伝えるのではなく、対処法や改善策を一緒に考えていく姿勢です。そのためには、最初から決めつけないということも大事だと考えています。相手の現状をしっかり聞き取り、思いや考えを理解し、同じ目線に立って最善の対処法を導いています。
食品衛生の分野であれば、法律の規制基準が数値で示されていない場合もあり、〝清潔〟に対する捉え方はたくさんあります。その中でいかに清潔のレベルを上げてもらうか。どうすれば設備投資などの負担を抑え効果を上げられるか。それは皆に実行してもらえるものか。まず提案いただき、意見を交換する中で、衛生課題への意識を高めてもらい、着地点を一緒に見つけています。
どれが妥当か。一番良い方法か。解決策は一つではないと思っています。多角的な視点を持ち、「どれを選択されますか?」と相手に色々な提案ができるよう、多様な分野について勉強を継続したいと思っています。
取り組み方のパターンを蓄積
自分の「引き出し」を増やす
新たな法律知識の習得は各部署で必要ですが、業務内容、働く仲間も変わり、色々な経験が積めるので楽しいですね。一つの仕事を経験するたびに、課題への取り組み方のパターンを蓄積できました。事業者への対応・指導の仕方、相手の本音を聞き出すノウハウなど、共に業務に取り組む中で、先輩方からは多くのことを教わることができたと思います。「他事業者でこういうケースがあったから一度検討してみては」と、適切なアドバイスや情報をいただけたり、色々なパターンがあると知り、ノウハウを習得できました。
自分の中にたくさんの「引き出し」を持てたことは、私の大きな財産です。自分が積み上げてきたもの、教わった考え方や対処法を、今度は後輩たちに伝えていかなければと考えています。