2つの保健所で、食品衛生・薬事の
幅広い業務を経験
公務員という進路を選んだのは、目の前の患者さまだけでなく、より多くの方の健康を守れる仕事をしたいと考えたからです。薬以外にも幅広い業務を経験できることも魅力に感じました。実際、入庁後は様々な仕事を経験し、それぞれの場で新たな視点を得てスキルを積み上げることができました。
最初の中丹西保健所では、食品衛生と薬事衛生の両方の業務を担当。飲食店の許認可や立入検査、薬局の開設許可などに携わりました。現場業務を行うには法令知識は不可欠で、その勉強にも力を注ぎ、次の山城北保健所では薬事衛生担当となり、毒物劇物や麻薬・向精神薬等の取締業務なども担当しました。
地元の小・中学生への薬物乱用防止教室、事業者の意識を喚起する食中毒予防の講習会を開催するなど、いずれの保健所でも積極的に啓発活動を実施。地域に根ざし、府民の方々のより近いところで、暮らしの安心・安全を守る業務に取り組むことができました。
新形態の危険ドラッグの
検査法を全国に先駆けて開発
「検査業務を経験してみないか」という話があり、保健環境研究所に異動となったのは入庁10年目。研究所では、危険ドラッグの検査・研究や残留農薬の検査などに携わりました。これまで指導をしてきた事柄について、科学的な根拠を出す立場となったわけです。
検査・研究の仕事は初めてでしたので覚えることは山ほどありました。検査手技やデータ処理の正確性・迅速性はもちろん、柔軟な発想力も求められます。例えば、当時拡大の一途だった危険ドラッグの検査。国から代表的な危険ドラッグ成分の検査法に係る通知は出ているものの、新たな危険ドラッグが出てきた場合、その検査法が確立されていないことがあります。実際に新形態の危険ドラッグが販売され、問題となった時、測定条件を検討し、手法を変え、必要に応じ他部署に協力を仰ぎ、考えうる限りの方法を試みました。
その甲斐あって、全国に先駆けて新形態の危険ドラッグに対する検査法を見つけ出すことができました。私が中心となり進めていた案件でしたので、喜びは大きかったですね。研究成果は学会で発表。厚生労働省に情報を提供したところ、検査法に関する通知が全国に発出されました。この危険ドラッグが日本で拡大するのをくい止める仕事の一端を担うことができ、私の自信にもなっています。
安心・安全な製品が
流通するよう監視指導を徹底
現在は、本庁に異動となり、薬事監視員として、主に医薬品、医療機器の製造所等の許認可や監視指導を行っています。具体的には、製薬会社などに対し立入調査を行い製造工程や手順を確認し、品質、有効性、安全性に問題がないかを確認し、必要があれば改善指導を行います。問題のある製品が流通すると、人の生命を脅かすような保健衛生上の危害につながるおそれがありますので、それを未然に防ぐのが私の業務です。保健所の時とはまた違った視点で、府民の健康や安心・安全を守っていると強く実感でき、やりがいを感じています。
医薬品は家電製品などとは異なり、全数検査※ではありません。だからこそ、製造過程を充分検証し安全性を担保する必要があります。どこまでやれば完璧かゴールがない分、現状に満足することなく事業者と品質を高めていくための方法を協議していくことが大切だと考えています。
私が働く本庁は、京都府全体の施策や計画などを策定する部署です。保健所からの問い合わせについても、私からの返答は京都府の方針を示すものとなるため、根拠をしっかりと調べるなど慎重に対応することが求められます。今後も府民の安全・安心に直接・間接的に深く係っていることを常に意識し、一つひとつの業務に対して取り組んでいきたいと思います。
※製造された全製品を検査すること