独立行政法人国立病院機構東海北陸グループ

業種 病院

資格取得

日本病院薬剤師会 HIV感染症専門薬剤師
2020年取材記事
日本人の抗HIV薬の体内動態などのデータに基づくテーラーメイド医療の確立を目指して。
国立病院機構名古屋医療センター薬剤部
医学系研究科博士課程 2004年修了

データを整理・解析し 患者さんにフィードバック

 私が病棟および外来のHIV感染症患者さんを担当するようになったのは、2004年に名古屋医療センターに入職した頃から。それまで特に関心があったというわけではなく、これを機に本格的に勉強を開始しました。
 10年ほど前から、様々な領域での専門薬剤師制度が本格化し、また薬学部が6年制に移行するなど、より薬剤師の専門性を重視する傾向が強まる中、私も「臨床薬剤師であると同時に研究者でありたい」との思いから、HIV感染症認定薬剤師および同専門薬剤師の資格取得にチャレンジすることに。日常業務を改めて見直し、整理することで、これまでの自分を振り返る良い機会になりました。また申請には、学術論文の提出も求められることから、データを収集、解析し、作成していく過程で、より論旨も明確になり、以後の服薬指導にも活かすことができました。
 これまで患者さんに学ぶことも多く、一緒に勉強し成長してきたという思いがあるので、資格取得を一つの通過点として、これからも患者さんにより多くの情報を提供していくことで、恩返しができればと考えています。

その人らしく暮らせることを 重視した処方設計を提案

 現在は、HIV外来の担当薬剤師として、診察前のHIV患者さんから、副作用や薬物相互作用をはじめとする問題を抽出。アドヒアランス向上への提案を行い、医師の負担を軽減し本来業務に専念できる環境をつくり、よりよい治療につなげることに取り組んでいます。
 特に服用を始めて1カ月以内は、多くの問題が出現する時期で、薬剤師の積極的な介入が非常に重要となります。また、抗HIV薬は一生涯にわたり継続して服用する必要があり、中途半端な服薬は早期に薬物耐性を誘導することにもなりかねないため、副作用や薬物相互作用にとどまらず、各人の生活スタイルの中で無理なく飲めているかを十分に確認することが重要です。生活の一部として、ちょうど〝歯磨き〟のように習慣化させていくことが、治療を成功に導くポイントであると言えるのです。生活の邪魔をせず、できるだけその人らしく暮らしていけるようにと考え、服用薬の選択や、処方設計を提案しています。
 また、抗HIV薬は海外製剤が多く、承認後の日本人の服用データが極端に少ないのが実情です。日本人における抗HIV薬の体内動態の解析、薬物代謝酵素活性などのデータをしっかりと把握し、院内の活動に限らず、情報発信にも積極的に取り組み、患者さん一人ひとりに合わせたテーラーメイド医療の確立に貢献していきたいと思います。

ADVICE

後輩の皆さんへアドバイス

臨床薬剤師 であると同時に 研究者であれ!

臨床疑問を解決する手法の一つとしての研究活動は、これからの薬剤師には必須であると思います。まずは目の前の患者さんに真摯に向き合うことから疑問点を抽出し、そこから研究課題を立案し、その解決に向けて全力を尽くしていきましょう。

HIV感染症薬物療法認定薬剤師であることなどが必要
  • 実務経験

    薬剤師実務経験3年以上、
    HIV感染症患者に対する指導
    3年以上従事
  • HIV感染症薬物療法 認定薬剤師取得

    研修の受講や講習会などの
    単位(10時間、5単位)以上履修、
    指導実績10症例以上を満たした後、
    認定薬剤師試験を受験する
  • 申請・試験

    HIV感染症領域に関する
    学会発表2回以上、
    学術論文1編以上が必要
  • 更新

    5年ごとに更新が必要
取得方法

HIV感染症専門薬剤師の認定を申請する者は、以下の資格を満たす必要があります。
(1)HIV感染症薬物療法認定薬剤師であり、かつ日本エイズ学会の会員であること。(2)日本医療薬学会、日本薬学会、日本薬剤師会学術大会、日本エイズ学会、関連する国際学会、全国レベルの学会あるいは日本病院薬剤師会ブロック学術大会において、HIV感染症領域に関する学会発表が2回以上(うち、少なくとも1回は発表者)、複数査読制のある国際的あるいは全国的学会誌・学術雑誌にHIV感染症領域に関する学術論文が1編以上(筆頭著者)の全てを満たしていること。(3)病院長あるいは施設長などの推薦があること、などの条件があります。

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