監視指導は、多くの国民を守る
最後の砦
薬学の知識を、より大きな枠組みで生かしたいと、行政薬剤師の道を選びました。大阪は自身の出身地であり、製薬会社が集まる「くすりのまち」。製薬企業が製造販売した薬が全国に流通します。監視指導や許認可をメインとした行政薬剤師の業務を行うにあたって、広く府民の健康を守ることができると大阪府庁を志望しました。
入庁後の配属先は本庁薬務課医薬品生産グループ(現:製造調査グループ)。医薬品製造工場などに立ち入り、関係法令に基づき適切に製造及び品質管理がなされ、製造されているかを調査します。調査員は一定の資質が必要となることから、入庁後すぐに調査員として査察に行くわけではなく、長時間にわたる研修を受け、基準を満たす必要があります。そのうえで経験豊富な先輩とともに査察に入り、必要があれば指導をし、適切に改善措置が実施されているかを確認します。健康被害にも繋がる可能性のある品質不良の医薬品を市場に流通させないための最後の砦として重要な役割を果たしていることに誇りを持って業務に従事しました。
コロナ禍、特任でワクチンの
配送スキームを構築
5年目に茨木保健所薬事課へ異動。本庁での仕事は狭く、深く専門的だったのに比べ、保健所での仕事は広範囲。医薬品や医療機器の製造・販売の監視指導、麻薬毒物劇物の審査・指導等、薬物乱用防止啓発など、薬事業務全般、様々な業務に従事しました。副主査に昇任した6年目に、日本で初めての新型コロナウイルス感染者が確認され、当所でも新型コロナウイルス対応業務に追われました。また3カ月間、本庁のワクチン接種推進課を兼任。当時、限られたワクチンをいかにして、最前線で頑張ってくださっている医療従事者や重症化リスクの高い高齢者等に届けられるか、行政職等の職員と意見交換しながら検討し、ワクチンの配送の仕組みを整備しました。日々情報が更新される中、これまでにない仕組みを作っていくことはとても大変でしたが、非常によい経験になったと同時に、有事の際、接種体制整備の一翼を担えたことには充実感がありました。
9年目、現部署の薬務課薬務企画グループに異動。現在、主に担当しているのは、治験環境整備促進事業です。コロナ禍では、宿泊施設や自宅の療養患者に対して、治験が行われる必要があったこと、在宅医療やオンライン診療など、患者さんの受診環境が変化してきており、治験でも病院に行かなくても参加できる新たな手法の広がりが期待されています。このことを踏まえ、府内の医療機関にアプローチし、治験環境整備を後押ししていく取り組みを実施中。この手法の実施において、欠かせない医療機関間の協力・連携を推進すること、府民に治験に関する正しい情報が伝わるよう情報発信を行うことにより、治験参加を希望する府民がアクセスしやすい治験環境整備に取り組んでいます。