人々の健康に貢献できる
薬剤師の可能性を知って
大学院在学中に大阪府庁のインターンシップに参加し、環境衛生監視員の仕事に随行しました。公衆浴場や旅館、理・美容院など多岐にわたる事業者に対し、法令に定められた衛生基準を満たしているか監視や指導を行う業務です。そこで地域の健康を守るという薬剤師の役割を知り、自分も府民の健康を支える公務員になりたいと思いました。
入庁後にまず配属されたのは、環境衛生課の「水道・生活排水グループ」。建物を建築する際に、地下水を掘削して自家用水道を設ける場合があります。その申請にあたって事業者からの相談を受けたり、水道施設や水質基準が法令に適合するよう指導するのが役割でした。建築図面を読み解くなど薬剤師の範疇にとどまらない知識が必要とされ、参考書を片手に、とにかく多くの現場を見ることで経験を重ねていきました。水質の違いによって処理方法が違いますし、建物の規模に応じたタンクの容量も違い、個々のケースごとにきめ細やかな対応が必要となります。中には承認まで時間がかかるケースもあり、完成を急ぐ事業者に対しては「なぜ、このプロセスを踏まねばならないか」を法令等の根拠も用いて、その必要性を根気よく説明しました。人と人とが関わる仕事は、誠実で緻密なコミュニケーションがカギだと実感しました。
「ありがとう」の言葉に
仕事の喜びを実感
4年目には四條畷保健所へ異動となり、管轄地域内の店舗や施設を訪問し、衛生監視・指導を行いました。学生として随行したインターンシップ時と違い、事業者に対面して衛生指導をする難しさを痛感。一律に衛生レベルの向上を求めるのではなく、多彩な業態や各施設の構造を理解した上で、現実的な取り組み方法を指導することが必要だからです。また「今すぐ必要な対策は何か」「時間をかけて対策すべきことは何か」という優先順位をつけることも大切ですね。「役所に言われたから」ではなく「自分たちのために」改善しようと思える…そのために常に事業者の視点に立ち、一緒に考える姿勢を心がけました。
今でも思い出すのは、ある公衆浴場にレジオネラ菌が検出されたケースです。これ以上菌を増やさないためには大規模な清掃が必要で、徹夜作業は必至。私も可能な限り現場に付き添って消毒作業の指導・助言を行いました。結果、次の検査で基準をクリアして翌日から営業ができるようになったのです。「ありがとうございます!」という言葉に、仕事の喜びを噛みしめました。
様々な部署での経験が
今に活かされている
保健所で3年間勤めた後、本庁の「食の安全推進課」へ。健康医療部内で薬剤師間の人事交流を行う試みで、私はその一期生でした。任されたのは「ふぐ処理講習会」の開催事務局。猛毒を持つふぐの調理には許可が必要で、そのための講習会です。ここでは方針づくりから講師の依頼、教材の準備、スタッフ手配…運営に関する全てを一任されました。何かをゼロから企画することでより深く、物事を創造的に考える習慣を身につけられた2年間でした。
現在は環境衛生課に戻り、総務企画グループで職員の研修プランを設計しています。若手のための専門的研修から、法律を学ぶ研修など私の企画した研修内容が職員全体の意識やスキルの向上につながると思えば責任は重大。様々な現場の課題を熟知し、企画に携わった経験があったからこそ、こうして前向きに取り組めているのだと、これまでの日々に感謝しています。