公益財団法人がん研究会有明病院

業種 病院
2023年取材記事
部門や施設の枠を超えて多様な経験を積み 医療の質向上に広く貢献できる薬剤師へ。
薬剤部
薬学研究科 2004 年修了
私のCAREER
チーフ

医局でのデータマネージャーから、薬剤部での感染管理やTDM体制の構築、PMDAでの安全対策、 さらに現在は未承認医薬品や適応外の使用の管理体制構築に関わるなど幅広い業務を経験。 医療の質向上に貢献するため、今後も広い知識や視野をベースに取り組んでいきます。

20年のCAREER

  • 1年目

    医局の化学療法部門で
    データマネジメント業務を担当

    医局の化学療法を主に行う部門で臨床試験に関わるデータマネジメント業務を担当。臨床試験の仕組みやデータの扱い方のほか、医師の診察を間近に見ることでがん診療の基礎についても学ぶ

  • 4年目

    薬剤部で院内の感染管理や
    抗菌薬適正使用の推進を担当

    まずは抗がん剤の調製などを含む調剤業務を徹底して学ぶことから始め、院内の感染管理や抗菌薬適正使用の推進なども担当。医師と協力して感染症科の開設やTDM(薬物血中濃度モニタリング)の体制構築などにも携わる

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    ここがPOINT1

    TDMの立ち上げ時には苦労しましたが、今も私が作った体制をベースに運用されているのを見ると、「自分のした仕事が皆の役に立っている」とやりがいを感じます。また体制構築に当たって、他部署の状況を知ることもでき、視野も広がりました。

  • 15年目

    PMDAに出向し
    医薬品の安全対策・情報提供に従事

    PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に出向し、全国から収集した情報のリスク評価などを通した医薬品の安全対策・情報提供に携わる

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    ここがPOINT2

    臨床現場だと目の前に患者さんがいるので、迅速な対応が必要不可欠となりますが、PMDAの決定は全国に影響を与えるものだけに、より強固な根拠が求められます。時間をかけて議論を煮詰めていく方法を学ぶことができ、知識だけでなく、思考の幅も広がりました。

  • 18年目

    未承認医薬品、適応外の使用
    についての管理を担当

    院内での未承認医薬品、適応外の使用についての管理に関わる仕組みや体制づくりに取り組む。またチーフとして、働きやすい職場づくりや後輩の育成にも力を入れる

臨床試験のデータマネージャーとして
キャリアをスタート

 学生時代に病院で研修生として勤務していた時に、自分が担当していた白血病で移植を予定していた患者さんが移植前処置の放射線と化学療法による感染症で亡くなられたのを機に、化学療法についてもっと深く学びたいと切望するようになりました。そんな私に大学院の教授が紹介してくれたのが、有明病院の化学療法を主に行う診療科でのデータマネージャーという仕事でした。医局の配属となり、薬剤師としては特殊なケースですが、きっとよい勉強になると、入職を決めました。
 データマネージャーとして、臨床試験に参加する医療施設への必要書類の送付や、各施設から収集したデータの精査、症例の登録、さらには臨床試験に参加いただく患者さんへの説明など、臨床試験の品質担保に関わる様々な業務を経験。臨床試験の仕組みを学ぶとともに、医師の診療を間近に見ることで、がん診療の基礎や医師業務のフロー、さらに論文やカルテを見た時のデータの捉え方など、その後につながる貴重な知見を得ることができました。

チーム医療に積極的に参加
新たな仕組みの構築にも尽力

 4年目からは薬剤部に配属され、抗がん剤の調製などを含む幅広い調剤業務について、まずは徹底的に学んでいきました。ICT(感染対策チーム)やAST(抗菌薬適正使用支援チーム)のメンバーとして、チーム医療にも積極的に参画し、TDM(薬物血中濃度モニタリング)の院内体制の構築にも中心となって取り組みました。また医師と協力して感染症科の開設にも力を尽くしました。
 9年目からは感染対策部を兼務し、それまで以上に感染管理や抗菌薬適正使用の推進に向けて、多職種の連携強化に力を入れるようになりました。抗菌薬の適正な投与量を示したマニュアルを作成したり、消毒薬の用法を標準化したりするにあたって、特に重視したのは薬剤師以外の看護師や病院スタッフにもわかりやすく、実状に即したものにすること。そのために現場で働く様々な職種の人たちの考えや意見を聞くなどしたことで、他職種を含めたコミュニケーションの取り方や、新たな運用体制の構築スキルなどを身に付けることができました。

添付文書の改訂の背景を
知りたいとPMDAへ出向

 DI(医薬品情報)業務なども担当し、添付文書の改訂時には、その情報を薬剤部内に迅速に展開するなどしていたのですが、「どういう経緯で変更されたのか」という、改訂の裏側に興味を持つようになりました。ちょうどそんな時に、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)への出向の話があり、「改訂の背景を知るチャンスだ」と志願しました。
 PMDAには医薬品の副作用による健康被害救済や治験の監査、医薬品・医療機器の承認審査などの業務がありますが、私が担当したのは、医薬品・医療機器などの安全対策および情報提供に関わる業務です。製薬企業や医療機関、医療従事者や患者さん個人など、世界中から収集した情報からリスク評価を行い、適切な情報提供へとつなげていきます。日本全国のルールをつくることになるだけに、チームで徹底してディスカッションし、細部まで詰めることが求められます。行政官や医師、獣医師、臨床検査技師など、多様な背景を持つ人たちと意見を交わす中で、多様な価値観に触れ、視野も広がりました。

未承認医薬品や適応外の使用に
関わる管理を担当

 18年目からは、院内で使用される未承認医薬品や適応外の使用についての管理を主に担当しています。様々な情報から該当するリスクを評価し、院内でどのような管理をするのが適切かを検討するため、情報収集や得られた情報の評価、患者さんへの説明などの薬剤師としてのスキルに加えて、他部門との調整や管理の仕組みづくりなど幅広いスキルが求められます。感染対策で他部門と調整してきたことや、出向時にリスク評価を行ってきたことなど、これまでの経験を活かしながら、安全性の担保と、現場の負担軽減とを両立するような仕組みをつくっていきたいと考え、取り組んでいるところです。新たな仕組みをつくるのは、簡単なことではありませんが、それだけに運用開始に漕ぎつけた時には大きな達成感があります。
 また、現在はチーフとして後輩が仕事をしやすい環境づくりやキャリアアップの支援も行っています。私自身も先輩、上司から多くのことを学んできたので、これからは私が伝える番だと思い、私の経験を踏まえて、いろいろとアドバイスをするなど、後輩の育成にも力を入れていきたいと考えています。

TO MY FUTURE

Myタイムカプセル

5・10年後の私

医局でのデータマネジメント業務や、TDMや感染対策業務等の立ち上げ、PMDAでの安全対策業務など、自分の多様な経験を後輩に伝え、それぞれの視野や可能性を広げることにつなげていきたいと思っています。またワークライフバランスを意識した効率的な業務を心掛け、仕事の質向上にも取り組んでいきたいと思っています。

これが成功の分岐点

「患者さんの役に立ちたい」
という思いが勉強の原動力に

研修生をしていた時に、白血病で移植を予定していた患者さんを担当した時のことが今でも心に残っています。私が移植前の服薬指導をした時は、とても元気そうだったのに、その1週間後に移植前処置の放射線と化学療法による感染症で亡くなられ、衝撃を受けました。自分の力不足を痛感し、「もっと勉強しないと患者さんの役に立てない」と、化学療法や感染症についてより一層、熱心に学ぶようになりました。この時の悔しい思いがあるからこそ、現在の自分があるのだと思います。

私流仕事に対する心がけ

目の前の仕事に全力投球、
周囲への影響も考えて進めることが大事

選り好みをせず、常に目の前にある仕事に真剣に取り組むこと。また、その仕事が達成されることでどのような影響が出るかを常に意識しながら仕事を進めるようにしています。特に運用ルールや体制をつくるような場合には、それらを使う人の立場に立って、できるだけ業務の負荷が増えず、仕事しやすいフローを考えるようにし、実効性を高めています。

学生の皆さんへメッセージ

興味のない分野でも
「視野を広げるチャンス」と前向きに取り組んでほしい

学生時代も社会人になっても共通して言えるのは、機会を逃さず、いろいろなことにチャレンジしてほしいということです。例えばあまり興味のない分野だったとしても、「これも何かの縁だからやってみよう」と前向きに取り組んでほしいと思います。それによって、視野が広がったり、その経験が意外な場面で役立ったり、きっと成長につながっていくと思います。

オフタイム

プライベートの大半は、1歳の息子の育児です。毎日が成長で驚くことも多く、充実しています。
また長期休暇の時は、家族で旅行するのが一番の楽しみです。自分で計画を立てる楽しみを糧に、日々の業務を頑張っています。

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