福井大学医学部附属病院

業種 病院
2023年取材記事
臨床疑問を研究につなげ より質の高いがん薬物療法の確立に力を尽くしたい。
薬剤部 がん化学療法管理室
薬学研究科 2007 年修了
私のCAREER
主任・がん指導薬剤師

全病棟の状況を把握し、業務支援や改善を行いながら、より質の高いがん薬物療法の仕組みづくりや院外の薬剤師への指導などにも取り組んでいます。今後も臨床の最前線に立ち続け、臨床疑問を研究へと昇華させていきたいと思います。

17年のCAREER

  • 1年目

    入職
    調剤業務・病棟業務

    まずは調剤の基本について徹底して学び、1年目後半からは病棟業務も担当。3年目には医療薬学誌に掲載された学術論文が論文賞を受賞。8年目からはがん化学療法レジメン審査・管理、抗がん薬調製業務管理にも携わる

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    ここがPOINT1

    日常の業務から得られる臨床疑問や、自分が問い合わせた内容などは、すべてメモに残すようにしています。時間ができた時に、これらを見直すことで、自分がどんなことを考えていたかを知ることができ、業務や研究に活かすことができています。

  • 9年目

    がん専門薬剤師の
    資格を取得

    がん専門薬剤師になるための50症例の作成を通してスキルアップ。資格取得後は、がん薬物療法に関わる薬剤師業務の充実や、後進育成に取り組む

  • 11年目

    患者指導管理室 主任~
    がん指導薬剤師

    患者指導管理室の主任として、全病棟での薬剤管理指導・病棟薬剤業務について把握し、適切な人的サポートや業務効率化の仕組みづくりなどを行う。14年目にはがん専門薬剤師の更新をするとともに、がん指導薬剤師の資格を取得

  • 16年目

    がん化学療法管理室 主任

    がん化学療法に特化した管理室が設立され、その主任としてがん化学療法レジメンの審査・登録や、抗がん薬調製の運用管理などを行う。大学の臨床薬学分野と共同での研究にも取り組む

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    ここがPOINT2

    文献検索をしていて、自分の論文が出てくると、「世界に発信できている」と手応えを感じ、励みになります。臨床疑問を研究につなげ、論文として発表することで、自分が直接関わる患者さんだけでなく、他施設の患者さんの役にも立てていると、喜びを感じます。

患者さんの役に立てるようにと
一層の研鑽に励む

 祖母も母も薬剤師だったため、子どもの頃から薬剤師は身近な職業でした。進路選択では母にも相談し、カルテを見ながら多職種と連携し、幅広い知識を身に付けたいと大学病院を志望。当院の先輩薬剤師の論文が契機となり、製剤の規格追加がなされたと聞き、院内にとどまらず、全国に波及するインパクトを与える可能性があると知ったことも、入職の決め手になりました。
 入職して間もない頃は、用法用量の確認に気を取られて規格や数を間違えたり、一方で規格や数は合っていても用法用量の確認が不十分だったりと、先輩から指摘されて落ち込むこともありました。しかし1年目の8月から消化器外科病棟に上がり、患者さんに直接、薬剤管理指導をしたり、医師のカンファレンスに参加したりするようになったのを機に、「落ち込んでいる場合ではない。苦い経験も失敗も糧にして、患者さんの役に立てるように研鑽に励もう」と気持ちが切り替わりました。他職種への情報提供も資料を示しながら積極的に行い、また臨床で生まれた疑問は書き留めておいて後で調べるなどするようにしました。

論文賞を受賞したのを機に
がん領域への取り組みを強化

 3年目には、前年度に医療薬学誌に掲載された学術論文が論文賞に選ばれました。大学院時代に当院で行っていた研究成果を論文化したもので、がん領域に興味を持つきっかけになったものでした。受賞は自身の励みになるとともに、がん治療に関する専門性をより高めたいという思いを強めるきっかけにもなりました。その後、がん指導薬剤師の指導のもと、レジメン管理と抗がん薬の調製業務に携わる機会を得て、臓器横断的に抗がん薬の知識を養うことができました。さらに抗がん薬の曝露に関する院内講習会の開催や、広く医療従事者に向けて抗がん薬の曝露対策の啓発活動にも取り組むようになりました。
 9年目にはがん専門薬剤師の資格を取得しましたが、その条件となる薬学的介入した50症例の作成・提出には苦労しました。根拠に基づくものであることはもちろん、抗がん薬のみならず、副作用の対応や病態の知識、さらには合併症などの患者さん個々によって異なる背景までが見えていないと、症例を作成することは難しいため、改めてガイドラインを確認することも多く、資格取得を目指すことで、自ずとスキルアップできたと感じています。

全病棟での業務支援や
院外の薬剤師への指導にも注力

 11年目には患者指導管理室の主任となり、全病棟での薬剤管理指導・病棟薬剤業務の実施状況を把握し、的確な人的支援を行うほか、指導記録の効率化につながるツールの導入などにも取り組みました。
 14年目にはがん専門薬剤師の資格の更新を迎えました。主任になってからも患者さんの顔を見ながら仕事をすることを継続してきたため、50症例の作成・提出(現在、更新は20症例に変更)という壁を乗り越え、更新することができました。さらにがん指導薬剤師も取得し、自らが培った経験をもとに後輩への教育・指導により一層力を入れるようになりました。また院内にとどまらず、他病院や保険薬局から研修に来ている薬剤師への指導も行い、資格取得を支援しています。

がん化学療法管理室の
主任としてより質の高い薬物療法へ

 がん医療の高度化に伴い、がん薬物療法に関する薬剤師の業務が拡大する中、私自身も患者指導管理室の主任を担いながら、がん化学療法のレジメンや抗がん薬調製の管理をすることは容易ではありませんでした。そこで16年目にはがん化学療法管理室が設立され、その主任を任されることになりました。
 がん化学療法レジメン審査は、医師・看護師・薬剤師が審査委員を務めますが、薬剤部が窓口となり、抗がん薬の投与量・時間・順序・スケジュールのほか、支持療法の検討を含めたメニューの組み立てを行っています。またがん化学療法の処方監査のチェック項目の標準化を進めるなど、より質の高いがん薬物療法の仕組みづくりにも力を入れています。
 さらに大学の臨床薬学分野と共同研究を実施し、臨床現場で生まれた疑問を大学の研究テーマに落とし込み、大学の教授や薬学生と議論しながら研究を進めています。博士号の取得を視野に、今後も積極的に論文執筆を進めていきたいと思います。

TO MY FUTURE

Myタイムカプセル

5・10年後の私

外来で治療されるがん患者さんが増えており、保険薬局の薬剤師との連携は欠かせません。今後、保険薬局の薬剤師との架け橋となって、情報共有できる体制を整えていきたいと思います。
また、がん化学療法について保険薬局の薬剤師に向けた研修を実施するなど、保険薬局の薬剤師がよりがん患者さんへの薬学的介入ができるよう、少しでも力になりたいと考えています。

これが成功の分岐点

がん専門薬剤師になったことで
活躍のステージがぐんと広がった

がん専門薬剤師の資格取得に向けて勉強してきたことで、がん領域の幅広い知識が身に付き、臨床での視野が広がり、医師や看護師から頼られることも増えました。同僚の薬剤師から相談されることも日常的になり、がん薬物療法について誰から何を聞かれても答えられるように心構えるようになりました。がん専門薬剤師は全国に700名以上おり、そうした多くの先生方と交流する機会が増え、施設の壁を越えて相談したり、共同研究を行ったりできるようになったことも、大きな収穫でした。

私なりの仕事の心掛け

相手の目線を意識し
理解しやすい説明を実践

何をするにも相手の目線を意識し、どう伝えればわかりやすいか、どうすればやりやすいかを考えながら仕事をしています。例えば、患者さんにはわかりやすい言葉で、たとえを交えたりするのに対し、医師や看護師に情報提供する時にはそれぞれの職種の理解に合わせた説明を心掛けています。また研修・講演では、聴講する対象者が見て頭に入りやすいスライドづくりを意識しています。

学生の皆さんへメッセージ

幅広い知識・技能を習得しつつ
資格取得などの目標に向けた準備を

病院薬剤師という視点での職場選びは、急性期か慢性期かなど、自分がやりたいことに見合う職場を探すことになると思いますが、やりたいことが明確ではない場合は、仕事をしながら自分がどうなりたいのかを考えられるよう、多様なことにチャレンジできる環境を選ぶとよいと思います。また、ジェネラルな知識・技能を習得しながら、自分の興味・関心を持てるもの、得意なものを探し、資格取得の目標を定めて準備していくことが、スキルアップの近道となると思います。

オフタイム

中学生の時から大好きなバンドの曲を今でも変わらず聞き続けています。不思議なもので自分のその時々の人生に寄り添う曲がたくさんあり、ずっと支えられています。
薬剤師免許を取得したらファンクラブに入ると決めていたので、ファンクラブ歴はまだ19年目で、ファンクラブ特典はまだ少ないですが、特典やライブグッズを集めるのも楽しみです。

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