日本赤十字社 大阪赤十字病院

業種 病院
2023年取材記事
より質の高い薬物療法を 継続して提供できるよう 地域連携を含めた 仕組みづくりに注力したい。
薬事衛生課 薬剤システム係長・ICU担当
薬学部 2013 年卒業
私のCAREER
薬剤システム係長

地域連携の重要性を強く感じる中、厚生労働省の薬局の連携体制整備に向けたモデル事業に参加し、情報共有の仕組みづくりを行いました。現在はICUを担当するとともに、薬剤システム係長としてよりよい薬物療法に欠かせない業務改善や環境整備にも力を入れています。

11年のCAREER

  • 1年目

    大学病院に入職

    大学病院に入職し、3年間にわたって調剤や抗がん剤の調製、病棟業務、治験業務などに携わり、薬剤師としての幅広い土台を築く

  • 4年目

    大阪赤十字病院に入職

    循環器内科・心臓血管外科・腎臓内科などの病棟を主に担当。入院中の服薬指導に加え、入院前に服用していた内服薬の確認を通して、ポリファーマシー対策にも取り組む

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    ここがPOINT1

    心不全で再入院される患者さんが多く、その原因の一つに薬の飲み忘れや、自己判断による休薬があることを知り、院外処方箋を扱う保険薬局と連携し、定期的に確認することの重要性を感じ、薬局の連携体制構築に強い関心を持つようになりました。

  • 6年目

    厚生労働省のモデル事業に参加
    薬局との連携体制構築を担当

    厚生労働省のモデル事業として、薬局との連携体制構築に取り組む。入退院時の情報共有に向けた仕組みづくりを進める

  • 9年目

    薬剤システム係長
    ICU担当

    薬剤システム係長として電子カルテのテンプレート作成や術後疼痛管理チームのマニュアル・プロトコル作成など、より質の高い薬物療法を提供する環境づくりに注力。またICU担当として、配合ルート管理や、中止薬の確認なども行う

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    ここがPOINT2

    薬剤システム係長として業務改善できることはないかと日々考え、病棟担当課長や調剤課長、医療安全担当の薬剤師などと相談したり、情報共有したりする中で、自分にはない指摘や意見をもらうこともあり、日々刺激を受けています。

地域連携や救急・災害医療を
深く学べる環境が魅力

 臨床現場で多職種と連携しながら患者さんと向き合いたいと、病院薬剤師を志望。多様な疾患に関わり、幅広い知識を身に付けたいと大学病院に就職し、3年の間に調剤や抗がん剤の調製、病棟業務に加えて、治験業務にも携わることができました。特に治験業務では、看護部や放射線部、検査部などと連携するなど、いろいろな職種の方々と関わりがあり、他職種の業務内容についても知ることができました。また、世の中には新薬を待つ患者さんがたくさんいると実感し、新しい作用機序を有する薬剤へのニーズの高さを再認識しました。
 また、退院して元の生活に戻られる患者さんへのサポートの重要性についても強く意識するようになる中で、地域連携に力を入れている大阪赤十字病院に入職することを決意。救急医療や災害医療について、より深く学べる環境があることも魅力でした。

個々に合わせた服薬指導や
ポリファーマシー対策に注力

 大阪赤十字病院では、循環器内科・心臓血管外科・腎臓内科などの病棟を主に担当。特に循環器内科の患者さんは、薬をきちんと服用できておらず、再入院する傾向が高いことがわかりました。なぜ服用できていないのか、患者さんへの聞き取りを徹底し、例えば「薬の数が多すぎる」ということであれば、減らせるものがないかを確認して調整したり、「あまり効果を感じないから」ということであれば、心臓を守るために必要な薬だということを再度、丁寧に説明したり…。患者さん一人ひとりに合わせた服薬指導を実践するとともに、入院時の持参薬を確認する時にポリファーマシー対策を意識し、最適化につながる提案を心掛けるようにしていました。

厚生労働省のモデル事業に参加
薬局の連携体制整備に取り組む

 私が6年目になる時、厚生労働省が掲げる「患者のための薬局ビジョン」の実現に向けた「薬局の連携体制整備のための検討モデル事業」に当院が採択され、入退院時の情報共有を軸とした各種薬学的管理の検討を行うことになりました。当院が位置する大阪市天王寺区の保険薬局と連携し、入院前に内服薬の種類のみならず管理状況についても確認。例えば、家族が管理しているのであれば、入院中の薬剤指導を患者さん本人だけでなく、家族とも共有するなど、より実態に即した指導が可能になりました。
 退院時には入院中の治療内容や薬剤の変更点などを保険薬局と共有するようにしました。従来、お薬手帳にメモ程度に記載していたのに対し、直接、保険薬局と定型フォーマットを通じてやり取りするため、記載漏れも少なく、実際に「副作用の症状やアレルギーがあることを退院時の情報共有で初めて知った」という薬局薬剤師の声も聞かれました。
 病院と薬局とが直接、情報共有をすることで、互いに大きなメリットがあることを実感し、引き続き情報共有の仕組みの整備、強化に取り組んでいます。また「地域連携」をテーマにシンポジウムで講演するなど、情報発信にも力を入れるようになりました。

よりよい薬物療法の提供を
実現する環境づくりへ

 9年目からは薬剤システム係長になり、より質の高い薬物療法を提供するための環境づくりや、業務の効率性を上げるための改善に取り組んでいます。最近では、リフィル処方箋への対応や術後疼痛管理チーム立ち上げに伴うマニュアル・プロトコル作成、様々な電子カルテのテンプレート作成などに携わりました。
 またICU担当も兼務しているのですが、点滴が多いため、配合ルート管理は非常に重要だと感じています。看護師からの質問も多く、配合変化表を作成して掲出するなどの工夫もしています。さらに、患者さんが一般病棟に移る時にICUで使用していた薬剤のうち中止すべきものはないか、再開する内服薬はないかなど、重点的に確認し、適切な薬物療法の実現につなげています。今後、救急・集中治療領域での資格取得なども目指していきたいと思います。

TO MY FUTURE

Myタイムカプセル

5・10年後の私

薬剤システム係長として、より質の高い薬物療法を提供するための仕組みづくりを進めるとともに、自身の専門性をより高めていくことにも注力していきたいと考えています。薬物療法専門薬剤師や、現在担当している救急・集中治療領域での資格取得などを目指し、それによって得た知見や視点を、さらなる業務改善・構築に活かしていきたいと思います。

これが成功の分岐点

地域や未来の診療報酬にも
目を向ける契機に

厚生労働省のモデル事業に参加して、保険薬局との入退院時の情報共有の仕組みづくりなどに取り組みました。このモデル事業で得られた成果や課題などをもとにして、2022年には退院時薬剤情報連携加算が新設され、より質の高い薬物療法の提供に寄与できたとやりがいを感じました。
また地域連携をテーマにしたシンポジウムに参加するという貴重な経験もすることができ、担当患者さんや目の前の算定だけでなく、地域や未来の診療報酬にも目を向けることになり、視野が広がりました。

私なりの仕事の心掛け

引き算できる部分はないかと
常に考え、業務改善に取り組む

病院薬剤師の業務内容は拡大してきているため、余裕を持って取り組める体制づくりは必要不可欠です。業務において簡素化あるいは自動化など、引き算できる部分はないかと常に考え、より薬剤師にしかできない本来業務に集中できるよう業務改善に取り組んでいます。またストレスを溜めないためにも、「何事も楽しむ」という姿勢で臨むようにしています。

学生の皆さんへメッセージ

まずは目の前のことに集中し
得意分野をつくることから始めて

やりたいことがまだ明確でない場合は、目の前の業務に真剣に取り組み、「これだけは誰にも負けない」という得意分野をつくるとよいと思います。それが次の関心につながり、得意分野を広げたり、苦手意識の克服につながったりします。

オフタイム

休日は電車に乗って京都に行き、鴨川沿いを散歩したり、読書したり、お寺でゆったり過ごしたりしてリフレッシュしています。観光客の多いメジャーなところより、静かな“穴場”めぐりをするのが好きで、例えば紅葉の名所で知られる東福寺に初夏の人気の少ない時期に行き、青紅葉を楽しんだりしています。

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