社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 大阪府済生会中津病院

業種 病院
2021年取材記事
薬剤師のスキルをさらに高めて
薬物治療をよりよいものに変革する力へ。
薬学部卒業 2002 年卒業
私のCAREER
AST専従薬剤師

ICT(感染対策チーム)からAST(抗菌薬適正使用支援チーム)として活動を続ける中で、薬剤師が薬物治療の質的向上に大きな役割を果たせることを実感。よりよい薬物治療を目指して、チーム活動を活性化させるとともに、後輩の育成や論文化などにも取り組んでいます。

20年のCAREER

  • 1年目

    製薬企業にMRとして入社

    MRとして製品知識に加え、コミュニケーションやプレゼンテーションに関わるスキルを磨き、医師をはじめとする医療スタッフとの信頼関係の構築に注力。また地方で勤務し、地域の違いや文化の違いについても学ぶ

  • 7年目

    中津病院に入職

    患者さんと直接触れ合える臨床現場で働きたいと病院薬剤師に転身。まずは調剤の基本を徹底して学んだ後、血液内科などの病棟業務を担当。その後、地域包括ケア病棟をメインに担当するようになり、退院時カンファレンスなどにも参加

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    ここがPOINT1

    当院では、保険薬局の薬剤師が修練生として受け入れており、退院時カンファレンスにも参加しているため、保険薬局の実情に照らし合わせた上で、ポイントを押さえた情報共有ができるようになり、地域医療の要として機能できていると感じています。

  • 9年目

    ICT活動を開始
    ~感染制御認定薬剤師の資格取得

    病棟業務を行う傍ら、ICT(感染対策チーム)の一員として病棟ラウンドやミーティングを実施。TDM(治療薬物モニタリング)業務の導入にも尽力し、投与設計にも積極的に介入するほか、学会発表にも取り組む。11年目に感染制御認定薬剤師の資格を取得

  • 14年目

    AST(抗菌薬適正使用)活動に参加

    AST活動に参加し、週1回のカンファレンスを通じて、症例に積極的に介入。16年目からはAST専従薬剤師となり、カンファレンスも週3回に増やし、より早期での介入のほか、採用抗菌薬の整理や情報提供・発信にも注力

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    ここがPOINT2

    医師を含めた院内スタッフのみならず、地域のクリニックや保険健薬局などを巻き込んだ勉強会も開催するなど、地域医療の担い手であることを意識して行動するようにしています。またより広範囲に情報を提供できるよう論文化するなど、自分の学びを現場に還元できるよう尽力しています。

コミュニケーション能力を
磨きたいとMRの道を選択

 コミュニケーション能力に自信がなく、どんなキャリアを築くにしても必要不可欠となるコミュニケーション能力をまずは鍛えたいと考え、製薬企業のMRを志望。薬学出身者に限らず、多様なバックグランドを持った人たちと切磋琢磨しながら働けることに加え、医師や看護師、薬剤師など幅広く医療人と接することができるのも魅力でした。
 実際に、製品の良さを一方的に話すのではなく、相手の興味の範囲やニーズに応じた説明をして初めてプレゼンテーションと言えるのだと痛感。患者さんのためにという最終目標に向けて、目線を合わせて話すことが信頼関係を築く第一歩であると学びました。こうしたMRを通じて学んだことは、臨床薬剤師になった現在も生きていると感じています。

院内他職種はもちろん
保険薬局の薬剤師とも交流し
連携を強化

 MRとしての成長も感じ、充実した日々を送ってはいたのですが、医師などから「患者さんがありがとうって言っていたよ」と間接的に聞くのではなく、自分自身が患者さんと直接触れ合いたいという思いが次第に強くなり、臨床薬剤師として働く決意をしました。中津病院は院内処方をしており、入院のみならず外来患者さんの調剤についても広く学べること、多くの診療科が揃いさまざまな症例について学べることが魅力でした。
 まずは調剤をはじめとするセントラル業務を基本から学び、翌年からは血液内科などの病棟業務を担当するようになりました。化学療法をしている患者さんも多く、細やかな服薬指導に加え、副作用モニタリングに基づいた支持療法にも注力。患者さんを目の前にして、これまで以上に勉強に身が入るようになりました。
 その後は地域包括ケア病棟の担当になり、在宅でも継続して薬物治療を続けていけるような服薬支援や、薬剤師なども交えた退院時カンファレンスを開催したりしています。当院は保険薬局の薬剤師を修練生として受け入れており、日頃から保険薬局の実情なども聞くことができ、スムーズな連携に繋がっています。

抗菌薬の適正利用を
薬剤師が主体となって推進

 MRの頃に感染症領域の医師と関わることも多かったため、ICTへの参加を前々から希望していたのですが、入職2年目に実現することができました。ICTへの参加を通じてより専門性の高いディスカッションができるようになり、また担当以外の病棟もラウンドすることで、知識の幅も広がりました。ICTメンバーの協力も仰ぎ、TDM(治療薬物モニタリング)業務の導入も実現し、投与設計にもより積極的に介入することができるようになりました。また学会発表を行うなど、発信力の強化にも努めました。
 さらに入職6年目からはAST(抗菌薬適正使用支援チーム)の一員として、週1回のカンファレンスに参加。さまざまな症例に、薬剤師が主体となって介入するなど、活躍の場を広げていきました。その2年後にはAST専従薬剤師となり、より多くの時間を割けるようになったため、カンファレンスを週3回に拡大し、より早期に介入できる体制を構築したほか、採用抗菌薬の整理や、院内の医師をはじめとする医療スタッフ向けの勉強会に加え、地域のクリニックや保険薬局などを巻き込んだ勉強会も開催するなど、情報提供にも積極的に取り組みました。
 これら活動をカタチにしたいと考え、学会発表したものをブラッシュアップして、2018年には論文として発表し、広く臨床現場に還元するとともに、いろいろな方からフィードバックをもらうことで次のステップへと進む準備にもなりました。

後輩の育成にも尽力し
ASTをより魅力的なチームに

 ASTをより魅力あるチームにしていくためにも、今後、後輩の育成にさらに力を入れていきたいと考えています。多くのチーム医療では医師が主導的な役割を果たすことが多いのに対して、当院のAST活動では医師が監督者として付くものの、薬剤師がメインであることが大きな特徴です。そのため多くの薬剤師がASTに参加し、活動を通じて薬剤師のスキルが向上すれば、病院の抗菌薬の使用量や使用法を変えることができる、薬物治療の質的向
上に大きく貢献できると確信しています。
 また医師や医療スタッフとのディスカッションや協働する機会が増えることは、多くの気づきを経験します。その体験をもとに、受け身にならず積極的に多部門とコミュニケーションをとるよう後輩薬剤師へ伝えています。
 薬剤師という職能をさらに広げ、その意義を周囲の人たちに理解してもらうためにも、もっと責任ある立場で院内・院外に携わっていけるよう、今後も意欲的に取り組んでいきたいと思います。

TO MY FUTURE

Myタイムカプセル

5・10年後の私

薬剤師にできることは、まだまだあると感じています。それぞれの職種が最大限の力を発揮して、チーム医療をパワーアップさせていきたい。そのためにも、責任ある立場で院内・院外問わず、多様な業務に携わり、薬剤師という職能をさらに拡大し、それに対する認知度も上げていきたいと考えています。

私なりの仕事の心掛け

より広い視野で考え行動することで
薬剤師の職能拡大につなげたい

AST専従薬剤師として、薬剤部とは一歩離れた立場で仕事をしているため、薬剤部についてより客観的かつ俯瞰的に見られるようになったと感じています。薬剤部という枠にとらわれず、一人の病院職員として、あるいは医療人として、どう行動すればよりチーム医療に貢献できるのかと考えることで、結果として薬剤師の新たな職能の確立につながることもあると思っています。

これが成功の分岐点

臨床現場での活動に加え
研究や教育にも力を注ぎたい

ICTやAST活動を通じて、医師とディスカッションしたり、一緒に行動したりする機会が増える中で、医師が診察・診断を行うのみならず、研究や教育にも常に携わっているということを知りました。それがきっかけで、私たち薬剤師も臨床現場での活動に加え、論文化を視野に入れた研究活動や、後輩の育成など薬学の発展に尽くすことが重要だと考えるようになり、従来以上に研究や教育への熱意が高まりました。

学生の皆さんへメッセージ

自らの思いの実現へ
臆せずにチャレンジしてほしい

社会人になれば、指示を待つのではなく、自ら考え、周囲に働きかけていくことが求められます。自分が何をしたいのか、将来どうなっていきたいのかとしっかり考え、常に問題意識を持って行動できる準備をしてほしいと思います。そしてどんな業務に対しても、自らの思いを実現すべく、臆することなくチャレンジしていってほしいと願っています。

オフタイム

休日は子どもたちと一緒に公園で遊んだり、テレビゲームをしたりして、のんびり過ごしています。
また野球が好きで、球場に観戦に行くのはもちろん、阪神のキャンプを見に沖縄まで行ったりして、家族で楽しんでいます。

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